医局長挨拶

石野 岳志
医局長 石野 岳志

広島県は広島市を中心とする中核都市がよく知られていますが、無医地区が多いことでも知られており、県全体でその医療ニーズは非常に高い状態です。そのような背景の中で、当科は県内で唯一医学部を有する広島大学に属し、地域の中核病院として診療に励むだけではなく、高度医療の提供拠点としての側面も併せ持ち、あらゆる疾患に対して日々研鑽を重ねています。

医学の細分化に伴う医療技術の高度化が進んでいることもあり、広島大学病院の耳鼻咽喉科・頭頸部外科ではアレルギー、頭頸部腫瘍、甲状腺、耳鳴、音声、言語および難聴、嚥下、睡眠時無呼吸、嗅覚と、重要疾患群に対する専門外来を一般外来とは別に併設しています。この専門外来では、通常の基幹病院では対応しにくい疾患の治療にあたるなどの高度な医療を行うだけでなく、その専門性を活かして関連分野の研究や医師の教育指導も行っています。広く国内外で身に着けた最新の治療方法や手術手技をもって若手医師を育成し、広島県全体の医療水準の向上に貢献しています。

教室の関連病院は非常に多く、現時点で常勤医のいる病院は21施設あります。しかしながらこの数は、そのカバーしているエリアの広さなどを考えると東京などの都心部と比べて明らかに少なく、常勤医不在の病院からの多くの派遣要請にも十分に応えられていない状態です。このため、その派遣要請に対しては非常勤医師の派遣(アルバイト)で対応していますが、これも徐々に増加してきています。これは若手医師にとって、豊富な実臨床の実践や安定した収入の確保という面において期待できる点であるといえます。

耳鼻咽喉科・頭頸部外科の専門医資格を取得するためには、所定の研修プログラムを修める必要があります。一般的に、市中病院での研修は限られた範囲の疾患群の中で受けることになるため全分野を網羅することは難しく、またその内容においても、専門性の観点で高度なものにはあたりにくくなります。在籍する医師数の関係で、学会出張や休暇取得などにおいて制限されることが出たりする可能性もあるでしょう。

それに対し、大学医局に所属すると、同期入局にはじまり幅広い年代の医師との交流が可能です。これは当該入局科に限ったことではなく、多分野、他職種のスタッフとの関わりも含まれます。将来、どのような道に進もうと人とのつながりは大切で、そのきっかけ作りに最適な場であるともいえます。例えば、医療の現場で困った時には、各専門の医師にすぐに相談して具体的な対処方法などを教えてもらうことができますし、同期入局者と相互に連絡を取り合うことでお互いにサポートしあうこともできます。また、新しくかつ専門性の高い各種技術も早くからごく当たり前に間近で体感することで、各分野に興味が芽生え、技術を修得するための向上心が生まれるといった副次的な効果も期待できます。ひいては、数年後の大学院進学あるいは海外留学といった将来設計への布石にもなるかと思います。さらに海外を含む学会参加や長期休暇の取得など、比較的自由に計画が立てられるのも数的に優る大学医局の大きな特徴です。

耳鼻咽喉科の手術の多くは短時間で、比較的緊急手術も少なく、分野に応じた様々な種類があります。診療の観点では、外科的な側面だけでなく内科的な側面も有する診療スタイルであり、「ワークライフバランス」の点でも希望に沿いやすい科であるといえます。また、予想される医師過剰時代の到来においても、全国的な耳鼻咽喉科医不足の現状を考えると需要は引き続き高いまま維持されると思われ、その専門性と今後さらに進んでいく超高齢化を考えると、耳鼻咽喉科医として働くことは将来的にも安定した仕事に携わるということになると思います。

広島大学大学院耳鼻咽喉科学・頭頸部外科学は、地域社会のあらゆるニーズに真摯に向き合いこれからもたゆまぬ努力を続けていきます。

希望に燃える、熱意ある皆様の入局を心よりお待ちしております。

(文責 石野岳志)